「日&月」別館 僕にとっての小説
文芸同人誌「日&月」の別館です。
「日&月」の片割れ、五十嵐正人が考える小説、実作の中から得たことなどを記していきます。
2007年05月24日
感動(4)小説の幸せ
甘いものは買ってくれば、手に入るという幸せ。それは消費経済を前提とした社会的な幸せだといえる。
かすかな甘みでも感じ取る味覚をもっているという幸せ。これは人間としての幸せだ。
小説は、僕にとっての小説は人間としての幸せの領域にありたいと思う。
【小説論の最新記事】
感動(3)素材と技術
感動(2)ジャンク
感動(1)味わう
posted by 五十嵐正人 at 23:47|
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2007年05月21日
感動(3)素材と技術
自然、社会、人間、営み……。小説の素材となるものにはすべて、人の心を震わせる何かが隠れている。読むという行為はそれに気がつき、それを味わい、それに震える心を持っているかどうかということなのだ。
良質な日本料理のように、良い素材をたしかな技術で仕上げれば、十分に美味しい。その商品としての甘みを測定すればジャンクな菓子の甘み度数には到底およばないだろう。しかし甘みを感じる心の動き(すなわち、味わい)の大きさはどうか。ジャンクな菓子は味わうまでも無く甘い。それだけだ。心が動く必要さえないほどに。
良質な日本料理は、食べた人が味わう心を十分に発揮することを前提としているのではないか。
僕にとって小説は、そういうものであってほしい。このことが、現在言われているところの小説の概念を外れるものであったとしても、僕にとっての小説はそういうものでありたい。
posted by 五十嵐正人 at 16:26|
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2007年05月20日
感動(2)ジャンク
感動の調味料が、これでもかと振りかけられているような小説。それを、ジャンク小説と呼んでみる。
甘みもまた、感動と同じで本来は味わうものなのだろう。しかし消費経済の中で、甘味料漬けになったようなジャンクな菓子が売れていく。味わう舌が鈍感なままでも甘みを感じられる食品。つまりそれは甘みを味わう菓子ではなく、甘みを与えてくれるだけの菓子。
おそらくそんなジャンクな菓子の氾濫は、消費者の舌を鈍らせる。舌が鈍くなった消費者はその愚鈍と化した舌にさえ甘みを与えてくれるような、さらなるジャンクを求めるだろう。こうして甘味料の量は増え、ジャンクの度合いと、消費者の舌の愚鈍化は加速していく。
同様に消費経済のシステムの中で、小説のジャンク化と、読者の心の愚鈍化は進行してはいないのだろうか。
このことはたぶん、流通も含めた出版文化全体の静かな自殺行為なのだろう。
posted by 五十嵐正人 at 00:00|
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2007年05月19日
感動(1)味わう
小説における感動は味わうものなのか、与えられるものなのか。
僕にとっては前者である。
僕が読者である場合、感動の調味料がこれでもかと振りかけられたような小説は読みたくもない。作品を味わうことによってはじめて自分の心が震えるような小説を読みたいし、そうして感動することができる心を持っていたい。
もちろん僕が作者である場合には、感動の調味料などできる限り使わずにいたい。僕の小説は、味わうことを望まない、つまり感動を味あわせてもらうことを望む読者には、味気ないものであればいいと思う。
感動を与える作品など、書きたくもないし、読みたくもない。
味わうことではじめて、読者の心が震えるような小説。それが僕の願う小説である。
posted by 五十嵐正人 at 00:23|
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